床下の湿気対策

除湿剤(調湿剤)の配置

床下除湿に適した除湿剤として、どのようなものがあるのか検討していきます。
除湿剤の用途は実に幅が広く、湿気を嫌う食品や押し入れ、精密機器など、身の回りのさまざまな場所で活用されています。目的に応じた効果を出るように、素材の種類や特性もバラエティに富んでいるようです。
まずは各種除湿剤に使われている素材の種類や特性などを押さえることにします。
特に、床下除湿の用途だと大量に必要となるため価格は特に重要ですし、除湿の作用が1回こっきりではなく、繰り返し行なわれるものなのか?などを重点に調べました。

各種物質の特性

酸化カルシウム(生(き、なま)石灰)

酸化カルシウムは水と反応することで水酸化カルシウムに変化する化学反応を活かして吸湿を行う物質です。湿気を吸うときに体積が約2~2.5倍もの大きさになるため、膨張した袋が破けたりすることが注意点です。また、急に水分を吸収すると発熱するため、やけどや発火などにも注意する必要があるようです。一方で、吸収できる水分量は自重の3割程度とそれほど多くはありません。

元の原料は石灰石で、それを破砕したものが重質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムを900~1400℃もの高温の炉で焼くことで製造されます。
石灰石のもとは、サンゴが長い年月を掛けて堆積したもののようです。

「しょうせっかい」も何か聞き覚えがある響きですが、こちらは「消石灰」の読み方です。消石灰は生石灰が水を吸うことで変化した水酸化カルシウムのことを指します。
消石灰は酸性に傾いた土壌のpHを中和するために園芸でよく使われています。「石灰」といえば通常はこの消石灰を指しますし、ホームセンターなどで気軽に買えるのはこちらのほうです。
消石灰はすでに水分を含んだ状態であり、それ以上の吸湿は期待できないため、除湿剤としては機能しません。

生石灰の価格はシリカゲルよりも安価なようです。吸湿力は並みであり、しかも吸湿のスピードもわりとゆっくりなのですが、逆に長期間の吸湿が見込めるため、食品の乾燥剤として利用されています。

大量の湿気吸収を期待したい床下除湿の目的とは合致せず、また、その危険な特性からなのか、大量に購入することもできないようなので、選択肢からは強制除外となります。

塩化カルシウム

プラスチックの容器に白いつぶつぶが入っていて、押し入れに置くタイプの除湿剤に用いられているのが塩化カルシウムです。吸湿すると液状になるため、どのくらい湿気を吸ったのか一目で分かるのが特徴ですね。自重の3~4倍もの吸湿力がありますが、一回湿気を吸うと終わりで、繰り返しの利用はできません。
酸化カルシウムと名前は似ていますが、特性はかなり違いますね。

塩化カルシウムは、水に溶けるときに発熱することと、水に溶けることで融点(凝固点)を-55℃程度に下げることができるので、融雪剤や凍結防止剤として利用されています。
この点で北海道や東北地方では身近な存在であり、「エンカル」などと呼ばれているようです。

液状になってしまうことや、一回こっきりであることから、床下除湿の用途には合いませんね。

木炭、竹炭、活性炭

ミクロの多孔質構造からなる様々な物質を吸着する作用を、吸湿・排湿に利用しようというものですね。
炭の表面積(比表面積)は、1グラムあたりで木炭が200~300㎡、細孔の目が細かい竹炭では表面積は300~500㎡にもなります。

炭の細かな穴は原料となる植物がもとのもともっていた道管などがそのまま残ったものですが、炭を1,000℃近い温度でさらに熱することで「賦活」という反応で製造される活性炭は比表面積が800~2000㎡/gに増えるだけでなく、あらたに生まれた孔は炭に比べて数万倍も小さく、吸着力も段違いになるようです。
浄水フィルターに木炭や竹炭ではなく活性炭が用いられているのはこのような違いによるものなのですね。吸湿力も同様に強くなりますが、価格も比例してお高くなり、バーベキュー用の木炭の10倍程度になるようです。炭に比べて10分の1の量でよいのか?を判断するにはさらなる調査が必要です。

ゼオライト

炭と同様に、多孔質構造による吸着性を利用した吸湿効果が期待できる素材ですが、数10種類にも及ぶ結晶構造がおりなす特性の違いなどからさまざまな分野での活用が研究されているようです。
比表面積は350~900m2/gと、活性炭には及ばないものの、木炭や竹炭よりも上回っています。

シリカゲル

食品用の乾燥剤としてよく目にするかと思います。
こちらも多孔質構造による吸着性を利用した二酸化ケイ素が原料です。比表面積は450~700m2/gで、ゼオライトと同程度です。
吸湿量は自重の50%程度と、塩化カルシウムには敵わないものの、酸化カルシウムよりは上回ります。

珪藻土

藻類の一種である珪藻の殻が化石となり堆積したものです。珪藻の殻は二酸化ケイ素という無機物でできていますが、珪藻が大量発生後に死滅するとき、水底に堆積した状態で有機物が分解されるため、二酸化ケイ素でできた殻部分が高密度の多孔質構造で残るようです。
ただし、比表面積は1~30m2/g程度と、壁材同士の比較としては圧倒的な特性であるといえるものの、床下除湿剤の候補として挙げた他の素材との比較では残念ながら見劣りする形となります。

各素材の細孔の大きさ比較

化学反応ではなく、多孔質構造に伴う吸着を利用した吸湿作用においては、細孔の径が小さいほど効果が高くなることがわかりましたので、比較のためその情報を抜粋してみました。
細孔の径が小さくなるほど、比表面積は大きくなるとの関係もあります。

  • 木炭:1~5nm(マクロ孔、メソ孔、マイクロ孔のうち、マイクロ孔の大きさ)
  • 竹炭:1~5nm(ただし、木炭よりもマイクロ孔の割合が高い)
  • 活性炭:1nm以下のマイクロ孔の割合がさらに増加する
  • ゼオライト:0.3~2nm
  • シリカゲル:0.4~2nm
  • 珪藻土:100~1,000nm

素材の選択と敷設量の検討

化学変化を活かした除湿剤は、継続性の観点から床下除湿には適さないと判断しました。多孔質構造系の素材の中では、とてもすべてを理解できそうにない奥深い特性を持つ素材であり、しかも安価なゼオライトの方向で決めました。

ネットで調べたところ、重量がある商品なのでどこも送料がかなり割高になるようでした。近くのホームセンターに探しに行きましたら、アイリスオーヤマの「床下さらり」が10kgで1,078円でしたので、この商品にしてみようと思います。たまに遠くの大型ホームセンターに遠征に行くことがあるので、そこで安く売っていれば仕入れてきたいところです。

ゼオライトや炭を調湿材として使用する場合、一般的に一坪あたり10~20kg程度撒くようです。我が家の床面積は15坪程度なので、150~300kg必要なことになります。

このDIYの取り組みにおいては、床下の湿気対策すべての費用を50,000円に収めることにしているのですが、他施策ですでに4万円ほど掛かっていますので、この兼ね合いで調湿材は100kgにすることにしました。

調湿材の撒き方

YouTubeの動画を見ていると、調湿材は防湿シートの上に直に撒いている事例が多かったです。
竹炭などの正規な製品の場合は、シート状やブロック状になっているものもあるようです。
念のため今後のことを考え、通気性のある袋に小分けにして配置することにしました。

引用:多孔質構造物質の各細孔の大きさは、「多孔質材料の表面物性評価における比表面積・細孔径分布測定について」(長野県工技センターさん)から引用させていただきました。

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