太陽熱

集熱器(温水生成部)の検討

太陽熱温水器の自作にあたり、この記事では集熱器(温水生成部)について調査や検討をしていきます。
集熱器は心臓部といえるのではないでしょうか。太陽の熱を効率よく集め、そして集めた熱を無駄なく温水に変換できるのかどうかが、太陽熱温水器の成果に直結するためです。
製品版ではどのようにして上記を要素を実現しているのか、そしてDIY事例ではどこでロスが発生していそうか、どんな工夫を入れれそうかなどを検討することで、安価で効率的な集熱器を実現したいなと考えています。

集熱器のエリート ⇒ 真空ガラス管&ヒートパイプ

製品においても、いくつかのタイプの集熱・熱交換器が存在します。
この分野で最高の能力を発揮するのは真空ガラス管製の集熱器です。最大の特徴はやはり、真空の断熱性により、集めた熱を外に逃がさないことです。これにより、夏場であれば100℃を超えるかなりの高温を作り出すことができるようです。それだけでなく、集めた熱を真空管の上部に取り付けられたタンクなどに効率よく伝達できるよう、銅管の内部にごく少量の純水を入れた「ヒートパイプ」と呼ばれる熱伝達棒が用いられています。
ヒートパイプ内の水は、真空管により熱されると蒸発しそのときに真空管内の熱を奪います。水蒸気が上部のタンク部分に移動しタンク部分に到着すると、タンク内の水に熱を伝達するとともに、液体に戻る際に凝縮熱を放出することで効率よくタンク内に熱を伝達することができるのです。

エヌ・テックさんのページより
Screenshot of www.ntec-fec.com

エヌ・テックさん

ヒートパイプのスゴさがグラフで紹介されています。実用上の金属の中では熱伝導率が最も高い銅でさえも足元にも及ばない性能があるようです。(しかもグラフは対数軸です)
個人的には、ダイヤモンドの熱伝導率の高さのほうが驚きましたがw

また、ヒートパイプ内は減圧することで内部の水の沸点(蒸発(気化)⇔凝縮(液化)の作動温度)が最適になるようにコントロールしているようです。最適な作動温度は用途によってさまざまだと思いますが、真空ガラス管製の集熱器に使用されるヒートパイプの内圧(沸点)がどの程度に調整されているのかについては情報が見つけられませんでした。(知っている方がいらっしゃったら教えてください)

真空ガラス管製の太陽熱温水器のタンクは、重量的に不安定になってしまうにも拘らず真空管よりも上に設置されている理由はこの原理を活かすためでした。(集熱器の中を水が通るタイプの集熱器もありますが、こちらも温められた水が上に上がろうとする対流の原理で自然循環を促すため、やはりタンクは上になります)

そのほかの集熱製品やDIY事例

DIYで真空ガラス管・ヒートパイプ・上部のタンクを扱うのは技術的にも費用的にもハードルが高くなってしまうので、どのようなものであれば取り組みやすそうか調べてみました。
塩ビ管やゴムホースを用いた自作の集熱器がyoutubeで数多く紹介されています。日本では塩ビ管、海外(恐らくアメリカ)ではゴムホースを用いたものが多いです。(youtubeで「solar warmer」で検索すると、海外の事例がたくさん表示されます)

太陽熱温水器の自作実験。4種類の素材を徹底比較!【前編】
自作の太陽熱温水器
DIY Solar Water Heater – Build A Solar Pool Heater From old Double Glazed Window
DIY Solar Water Heater! The CPVC “Drip-Edge” Solar Water Heater! – New Design/Exp.(CPVC+Metal)

塩ビ管は口径が100mm程度と太く、塩ビ管の表面で集めることができた太陽熱をどのくらい内部の水に伝達できるのかが気になりました。水を温めることなく外に放出されてしまう熱が結構多いのかもしれないと思いました。ゴムホースも塩ビ管よりは厚さは薄いのでしょうが、それでももっとよい方法がありそうだなと感じました。

この観点だと、集めた熱をロスなく水に移すには、薄く、熱伝導率が高い金属製が合致しています。
流用できそうな金属製の熱交換器を探ってみました。

Screenshot of www.amazon.com

Amazon.comさん

アイキャッチの画像は、アメリカのAmazonで取り扱われているドーム型の太陽熱温水器で、「Solar Pool Heater」という商品名です。アメリカではプールの水を温める需要が大きいようで、さまざまな形・方式の太陽熱温水器が売られています。
日本のショッピングサイトや私御用達のAliExpressでも探してみたのですが、同様の形をした商品は見つけられませんでした。

ドーム型のカバーで覆われているのが特徴で、やはり集めた熱を外に逃がさないことは重要なのかもしれません。あと、ドーム型の利点として、太陽の移動に強そうだと感じました。

エアコンの熱交換器

ハイセンスジャパンさんより

エアコンは室外機が本体であると言われるほど、室内機側の構造はシンプルで、熱交換器とファンとリモコン受光部の制御部品くらいです。
この形を見てみると、発生させた熱を室内側に最大限に送り込めるよう冷媒管は枝分かれし、かなりの立体構造になっています。熱交換の効率は最高だと思われます。
しかしながら、私が製作をイメージしている集熱器部分は平べったい形なため、かなり厚みがでてしまうことなるのがネックです。
また、需要が少ないためか、ネットオークションなどにはあまり出回っていない模様です。

オークションに出ている熱交換器

ブレージングプレート式熱交換器 日阪製作所
日阪製作所さんの動画

ネットオークションで「熱交換」などのキーワードで検索していると、左のようなものが一定数出品されていました。
このような形状の熱交換がどのような製品に利用されているのか調べてみたところ、どうやらエコキュートの温水タンクから給湯系の水に熱を移す部品もこのタイプのようで、プレート式熱交換器という製品でした。
仕組みをわかりやすく説明している動画もご紹介します。

価格は、Aliexpressですと長さ約200mmの大きさで4,000円台から、ネットオークションでは、日阪製作所さんの製品で5,000~10,000円程度でした。

工場などでもこの形状の巨大なものが使われており、効率はかなり高いと思われます。基本的には液体同士での熱交換に使われているようで、片方が気体の場合はどうなるのか?が気になることと、両側の流動のためにポンプが2つ必要になることがマイナスファクターかもしれません。

車のラジエーター

車のラジエーターは、エンジンが必要以上に熱を持ちすぎないように、エンジンから一旦冷却水に熱を移し、熱水となった冷却水を車の前面パネルから取り込む空気と熱交換することで、冷ませてあげるための機構です。エンジンが熱くなりすぎることをオーバーヒートといいますが、その兆候をみるための水温計は、冷却水の温度を示しています。
ラジエーターの構造は、水と空気で熱交換を行うため、集熱器で温めた空気を熱水に変換するという関係と酷似しています。しかも、冷却水がラジエーター内を通るときは、チューブと呼ばれる平べったい水路に分岐しており、空気と接する側もフィンと呼ばれる細かな隙間を無駄なく空気が通るよう計算されているため、相当効率もよさそうです。
車の部品交換やカスタム需要のためか、ネットオークションでもかなりの量が取り扱われており、程度を選ばなければ(水漏れはNGですが)3,000~5,000円程度で入手できそうなので、かなり有効な候補になりそうです。

パソコン水冷ユニットの熱交換器

ヒートパイプ

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