太陽熱

潜熱蓄熱材(PCM)の調査

「潜熱」は、物体が融解(固体⇒液体)や気化(液体⇒気体)するときに、周りの熱を吸収したり放出したりすることにより、その付近の温度を一定時間保つことができる性質です。
一番身近なのは氷が溶けるとき(氷⇒水)だと思います。氷が融解するとき、0℃付近で周りの熱を吸収することで、対象物を保冷する効果が生まれます。逆に水が凍るときは0℃の水がしばらくの間熱を放出し続け、それが終わったら0℃以下の温度に下がっていきます。
この性質を0℃付近ではなくもっと低い温度で潜熱するのが保冷剤です。融解温度が-20℃~-15℃くらいの物質を用いることで、その付近で周りの熱を奪う作用が発動するため、マイナス20℃以下に冷やした氷よりも高い保冷効果を発揮します。

「潜熱」に対し、状態が変化しないまま温度が上がったり下がったりする熱のことを「顕熱」と呼びます。身の回りには「顕熱」のほうが多いと思います。
顕熱では、各物質の容積比熱がモノを言います。水は質量比熱が高く、安価で取り回しが利くので常温付近での蓄熱には有効ですが、蓄熱式暖房機にレンガが用いられているのは、容積比熱では水と比べても遜色ない上に、数百度に熱することができるためです。

潜熱蓄熱材には、暖房に向いている温度帯で潜熱を行うタイプもありますので、太陽熱温水活用においては、50~70℃くらいで潜熱を行う物質で安価なものがあればDIYに活用できそうですね。

暖房製品に利用されている潜熱蓄熱材

まずは製品から。

Screenshot of www.sumikapla.co.jp

「スミターマル」
住化プラステックさん(PDF)

主成分は硫酸ナトリウム・10水和物で、20~25℃の範囲で融解(外からの熱を潜熱)し、19~21℃の範囲で凝固(潜熱した熱を放出)するようです。
こちらの資料では、「パッシブソーラー用」と紹介されていますが、この「パッシブ」とは「アクティブ」と反対の「受動的な」といった意味で、電気などから作った熱を与えることをせず、昼間室内に差し込む太陽の熱を蓄えるといった意味で使われています。
もちろん「パッシブ」に限った用途でしか使えないわけではなく、安価な深夜電力を利用して蓄熱する「ルナホット」や熱効率の高いヒートポンプ温水を利用した「ルナプラス」といった「アクティブ」な製品もあります。

Screenshot of www.tamai-kasei.co.jp

「パッサーモ」
玉井化成さん(カネカグループ)

-50℃~50℃という非常に広範囲な作動温度に対応することで、保冷から蓄熱まで幅広い用途に使用されています。
作動温度ごとに主成分は異なるのかもしれませんが、蓄熱向け製品のFシリーズは「天然油脂から加工した原料が主剤」とあります。

PシリーズのP50という製品は50℃が潜熱の作動温度なようですので温水の保温にも使うことができるかもしれませんね。

上記の製品に使われている素材の主原料を調査し、自作可能なものはないか探ってみました。

酢酸ナトリウム

食品の添加物としても用いられるくらい安全で、酢酸ナトリウム三水和物という形態がよく利用されています。このときの融点は約58℃ですので、太陽熱と組み合わせて使う目的においては理想的な作用温度と言えそうです。
比重は1.45。常温では白色の固体、融点以上では無色の液体となります。
酢酸ナトリウム三水和物は酢酸ナトリウムが水に溶けている状態のことですが、酢酸ナトリウム1gに対し水が3gという重量比ではなく、分子量で1:3ということになります。
酢酸ナトリウムの分子量は82、水は18ですので、酢酸ナトリウムが82gとすると54gの水を混ぜ合わせればよいことになります。
酢酸ナトリウム三水和物は非常に「過冷却」しやすい性質があるため、これを活かす用途として、繰り返し使用可能なカイロや化学実験にもよく使われているようです。
「過冷却」とは、本来凝固しながら潜熱している熱を放出することで融点温度を保つべきところ、うっかりと液状のまま(潜熱を保持しながら)温度が融点よりも下がってしまうことです。
なんらかの刺激によりハッと気づいた瞬間に一気に凝固が始まり、その際に熱も一気に放出されるため、カイロとしての効用が得られるということになります。

太陽熱における蓄熱材として考えた場合、過冷却(もしくは過熱)はマイナスファクターとなります。まったく潜熱作用が得られなかった場合は顕熱(比熱)の値がそのまま作用することになりますので、比熱が多い水と比較してみました。
酢酸ナトリウム三水和物の容量比熱:約4,800kJ/(m3·K)  水の容量比熱:約4,200kJ/(m3·K)
容量比熱で比較したのは、例えば太陽熱温水器で考えた場合、タンクの容積は一定ですが重量の制限はそれほど厳しくはないと思われるためです。床下の蓄熱材で考えても同じことが言えるかと思います。
酢酸ナトリウム三水和物のほうが水よりも比重が大きく、これにより容積比熱で比べると水よりも顕熱が大きくなるため、潜熱効果がまったく得られなかった場合でも致命的ではなさそうです。
とはいえ、この過冷却がどの程度発生するのか、「刺激」というのはどの程度必要なのか、ぜひ実験してみて体感したいところです。

パラフィン

石油や原油を原料として精製して作られる鎖式飽和炭化水素のうち、炭化水素の鎖が長く(炭素原子が20以上)常温で固体になるものがパラフィンと呼ばれています。鎖が長くなるほど融点が高くなっていくので、ちょうど暖房用途にちょうどよい融点になるということですね。
ちなみに、鎖が短く融点が低いため、常温で気体となるメタンやプロパンも同じく鎖式飽和炭化水素であり、これらを合わせて「アルカン」と呼びます。化学の知識がないととても仲間だとは思えないですよね。

現代ではろうそくの原料としても使われていますが、その昔ろうそくの原料であった木から採れる蝋(木蝋)はパルミチン酸などの飽和脂肪酸が主成分であるたため、狭義においてはパラフィンと蝋は別物ということになります。

アルカンは炭素原子の数ごとに名前が付いていて、炭素原子が直鎖で25個(分子式はC25H52)のものはペンタコサンです。ペンタコサンは融点が53~56℃なので、暖房用途の潜熱材の主原料としてよく用いられるパラフィンなようです。
製品化の際の工夫や過冷却の特性などについて引き続き調べていきます。

硫酸ナトリウム

硫酸ナトリウム10水和物という形態でよく利用されており、融点は約32.4℃と太陽熱温水との組み合わせを考えると低めですが、この温度帯が適している用途として、上記でも紹介したパッシブ蓄熱材「スミターマル」の主原料でもあります。

塩化カルシウム

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